2013年度

第12回
日時 3月7日(金) 14:30~16:00 ※通常と時間が異なります
講演者 青木 健一 氏 (金沢大学)
タイトル くりこみ群方程式の弱解による自発的質量生成の記述
―私たちがいかに数学を勉強していなかったのか、の証明―
概要 くりこみ群は素粒子論に限らず物理学のいろいろな分野で使われる汎用の手法である.特に場の量子論においては,無限自由度の汎関数積分で理論は定義されるが,それを評価するのにいったん汎関数微分方程式に直す手法があり,非摂動くりこみ群と呼ばれる.実際の物理量の計算では,関数空間を制限して,汎関数微分方程式を偏微分方程式や連立常微分方程式に射影して解析する.
今回は,南部陽一郎に始まる自発的質量生成という素粒子論の根幹の課題に対して,くりこみ群によるアプローチを行う.その時,自発的対称性の破れに伴う特異性が必然的に発生し,くりこみ群方程式には大域解がなくなってしまう.物理量の評価のためには,時間無限大の漸近解が必要なので,くりこみ群方程式を弱方程式に拡張する方法によって.大域解を得て,物理量を計算する.この弱解がまさに物理的に正しい結論を導くことをいくつかの適用例で示す.これは,素粒子論・くりこみ群において弱解が適用されたはじめての例である.
(なお,本セミナーはあくまで物理としての弱解の応用例の紹介であって,数学的な意味での新しい結果はありませんので,あらかじめご了承下さい.)
arXiv:1403.0174 [hep-th] 青木健一、熊本真一郎、佐藤大輔
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第11回
日時 2月21日(金) 16:30~18:00
講演者 上田 肇一 氏 (富山大学)
タイトル 柔軟なアトラクタ遷移を可能にする大自由度力学系
―経路探索問題への応用―
概要 ネットワーク上の力学系における柔軟なアトラクタ遷移の理解を目標として,ネットワーク内の2点をつなぐ経路を自動的に探索する数理モデルを提案する。ネットワーク上のノードのダイナミクスはFitzHugh-Nagumo型の方程式で記述され,ノード間は活性または抑制効果を持つエッジによって結合される。結合に関する制御ルールを工夫することによって,経路探索問題の解を安定定常解として表現することに成功した。また、エッジの切断などパラメータの変化が生じた際にも新たな解を自動的に探索する。講演では,ノードダイナミクスに必要な分岐構造についても議論する。
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第10回
日時 12月13日(金) 16:30~18:00
講演者 齊藤 宣一 氏 (東京大学)
タイトル 離散Sobolevの不等式とその有限要素解析への応用
概要 種々のSobolevの不等式は,非線形偏微分方程式の解析で重要な役割を果たす.したがって,それらの偏微分方程式を差分法や有限要素法で離散化した近似方程式を扱う際にも,同じSobolevの不等式が利用できると便利である.しかしながら,近似方程式の解は,局所的な正則性しか持たないのが普通なので,おのずと利用できるSobolevの不等式も限られてしまう.そこで,考えている離散化に合わせて, Sobolev型の不等式が成り立つような離散的なノルムを導入することになる.本講演では,有限要素法を例にして,作用素の分数冪を利用した離散高階ノルムの導入方法と,その性質,応用例をお話ししたい.
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第9回
日時 11月22日(金) 16:30~18:00
講演者 小川 卓克 氏 (東北大学)
タイトル Threshold for the global behavior of solutions to a degenerate drift-diffusion system in between critical exponents
概要 退化移流拡散方程式は圧縮性Navier-Stokes-Poisson 方程式,あるいは圧縮性Euler-Poisson方程式の緩和時間零の特異極限として導出され, 半導体のモデル方程式, 重力下における天体の挙動, あるいは走化性モデルの極限方程式など, まったく物理スケールの異なるモデルを同時に説明する方程式として興味深い. このモデルの流体力学からの導出と, 比熱比から決まる非線形指数に対する二つの臨界指数(L1臨界とSobolev 臨界)について述べたのち, それらの臨界指数間の場合の解の大域挙動を分ける閾値について述べる.
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第8回
日時 11月8日(金) 16:30~18:00
講演者 栄 伸一郎 氏 (九州大学)
タイトル 進行パルスの領域依存性について
概要 進行パルス解の運動を2次元領域で考え, その運動が領域の形状にどのように影響するかを考察する.具体的には, 曲面上のスポット解の運動と, 曲がった細い領域上のパルスの運動を考え, それぞれ本質的に, 曲面のガウス曲率の勾配や中心線の曲率の2乗に関する勾配に依存した運動が出現することを示す.また多重パルスの場合も考え, それらの相互作用についても言及する予定である.
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第7回
日時 10月18日(金) 16:30~18:00
講演者 鈴木 貴 氏 (大阪大学)
タイトル 弱解の生成と古典解の爆発機構~2Dスモルコフスキー・ポアソン方程式の場合
概要 空間2次元のスモルコフスキー・ポアソン方程式の測度に値を持つ弱解はこれまでいくつかの文献で導入されているが, 自己相互作用に由来する非線形項の取り扱いに相違があり互いの関連が明確でなかった. 本講演では2002年に講演者らによって導入されたもっとも狭義と思われる弱解を用い, いくつかの性質(瞬間爆発、有界族の弱コンパクト性、リュービル性)とスケーリングを組み合わせて古典解の爆発機構を解明する研究を紹介する. 特にこれまで見過ごしてきたコラプスの衝突をconcentration compactness principle によって検出し, その量子化を完全に分類する.
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第6回
日時 10月4日(金) 16:30~18:00
講演者 柏原 崇人 氏 (東京大学)
タイトル 流体構造連成問題から生じるある一般化ロバン境界条件について
概要 アブストラクトはこちら
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第5回
日時 8月2日(金) 16:30~18:00
講演者 井上 淳 氏 (東京工業大学名誉教授)
タイトル 非可換解析学とは何か --- Feynmanの問への答え, Wittenの方法の解明へ
概要 Feynman は大学院学生のとき「量子力学とは何か, 古典力学との関係は」という素朴な疑問から, 数学者には悪名高く物理学者には有用な Feynman 測度を導入し, 自らの疑問に見事に答えたことになっている。しかしその当時, Dirac 方程式に対しては Schrödinger 方程式と同様にとは行かなかった。彼の提案は四元数を用いたらどうかというものであった。
約半世紀後に Witten はスーパーシンメトリーの考えと Feynman 測度を用いて Morse 不等式を見事に説明した。これらの基本にある数学的な基礎はどうあるべきなのか?
無限個の Grassmann 生成元でスーパー空間を構成し, その空間上の解析学を展開することによってこれらの疑問に答えようとする, その試みの一端を述べる。
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第4回
日時 7月5日(金) 16:30~18:00
講演者 小林 孝行 氏 (佐賀大学)
タイトル Decay estimates of solutions to the 2D dissipative wave equations
概要 2次元線形熱方程式の Cauchy 問題の解は,初期値が L1に属していても,時間と空間に関する L2 有界性は一般には成り立たない。本講演では,初期値が L1 より狭い Hardy 空間に属する場合は L2 有界性が成り立つことを示し,その応用として,2次元外部領域における消散項をもつ非線形波動方程式の初期値境界値問題の解の L2 有界性について議論する。
本講演の内容は,熊本大学の三沢正史教授との共同研究である。
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第3回
日時 6月7日(金) 16:30~18:00
講演者 石渡 通徳 氏 (福島大学)
タイトル Scale invariant version of the critical Hardy inequality and the associated variational problems
概要 Hardy の不等式はその発見以来,解析学や数理物理学において重要な役割を果たしてきた。ディリクレノルムに付随する Hardy の不等式は,空間 3 次元以上の場合自然なスケール不変性を持つことが知られているが,空間 2 次元の場合現在知られているものは自然なスケール不変性を持たない。本講演では,空間 2 次元の場合において自然なスケール不変性をもつ新しい Hardy 型不等式と,不等式に付随する最小化元の非存在を議論する。
なお本研究は愛媛大学の猪奥倫左氏との共同研究に基づく。
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第2回
日時 5月17日(金) 16:30~18:00
講演者 石井 克幸 氏 (神戸大学)
タイトル 変分法に基づく平均曲率流の近似問題について
概要 2004 年,Chambolle は画像処理に現れる変分問題を基にした平均曲率流に対する近似アルゴリズムを考案し,L1の意味で平均曲率流へ収束することを示した。その後,彼のアルゴリズムの収束や拡張に関する研究が行われている。本講演では Chambolle のアルゴリズムの収束や拡張について最近得られた結果を紹介する。
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)

第1回
日時 4月19日(金) 16:30~18:00
講演者 カレル・シュワドレンカ 氏 (金沢大学)
タイトル 多相平均曲率流のためのベクトル値BMOアルゴリズムについて
概要 平均曲率流は面積の勾配流として自然界の界面の動きのモデルとしてよく使われる。本講演では、複数の相を分けるいくつかの界面が存在し,それぞれの相の体積が保存される状況を考える。また,素材の異なる表面張力により決まる接触角を考慮する。グローバルな制約条件とジャンクションの安定な接触角が与えられた多相の平均曲率流の近似方法について紹介する。すなわち,BMOアルゴリズムをベクトル値に拡張し,変分問題として記述することで様々な界面運動が実現できることを示す。
場所 コロキウム3 (自然科学5号館471)


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